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2021.11.18.Thu

いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』

▼いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』
9/17
10/12


[作]中島かずき
[演出]いのうえひでのり
[出演]中村倫也 / 吉岡里帆 / 浅利陽介 / 竜星涼 / 早乙女友貴 / 千葉哲也 / 高田聖子 / 粟根まこと / 向井理 / 他

赤坂ACTシアター

フルスロットル新感線!待ってたよお!!!
yellow新感線ももちろん大好きだったんだけど、ひたすらド派手なものがボンボン飛び交うこの…この感じ!!!最高

▼全体について
初見は初日だったのですが、見終わった後の素直な感想としては「すごくいい…が、しかし色々足りてねえ!!」でした。
「元々あったものが削られてしまった感」がすごく強かった。
だからと言って物語として破綻してるとか足りなすぎてわからないとかではなく、「泣く泣く削りました感」と言うんでしょうか。
あとから知りましたが、戯曲には存在している1景がまるまる削られてたりとやっぱ「在った」みたいなんですよね…。
このご時世で上演時間の都合上や、その他いろんな要因によってなくなってしまった部分があり、正直誰のせいでもないというのがまた辛いところ。
私はしきりに「1年アニメの狐晴明」を考えてるんですが、1年とは言わないけどあと30分とかあったら描かれていたであろうあらゆる物事がイメージできるからこそ勿体無さを感じます…。
でも、それはそれとしてちゃんと面白いんですけど!!!

この演目、ひたすらラストの""意味""について考えたくなってしまう。
何故、安倍晴明は感情を取られたのか…と。
もちろん感情のなくなった、晴明が、""安倍晴明""のパブリックイメージになる、というのもあります。
分かる、分かるんだけど、ラストにそれを突き付けられてまずは苦しくなっちゃった。
それまでいい感じになんとかパイを倒したしこのあといい感じに物語が閉じるのかな…と思った矢先に…これ…!!
これ、主人公に降りかかる展開じゃなくない!?どっちかというとヒロインじゃない!?(ほら…ニアとか…)
今思いましたけど、なんとなく狐晴明における"主人公"って不在なのか?という感じがする。
もちろん晴明は主人公だし、中島作品の主人公だなって思うんですけれど…。
多分晴明自身が「物語の中心にいようとしない」からかなあ。
晴明の中で「主人公」ってきっと利風なんだろうなと思う。自分はあくまでサブキャラに徹しているから、中心にいようとしていない。
仕方なく主人公のポジションにいる…みたいな。
髑髏城の七人で言うと贋鉄斎のポジションにいたいとか思ってません??(?????)
本人がいたいポジションと、物語が晴明をいさせたいポジションが違っているような。
その結果なんだか分からないけどあらゆる要素を一人で回収しまくっている気がしてしまった。
だからといってそれが悪いというのではなく、そういう不具合が存在しているなと感じるっていう。
蛮幽鬼とかやってる頃の新感線だったら主人公は利風ぽくない?と思う。

「感情を奪われた」というのは泰山府君祭の代償とも言えるし、「自分の役目の終了」かもしれないし、最後の最後にパイが部分的に勝利した、と言える…かもしれない…かもしれない。
「感情」って大雑把に言ってるけど、魂・心と同義なんじゃないのかなあ。
パイ・フーシェンってあくまで自分のために力に固執していたはずなのに、いつの間にか晴明・利風の思惑によって執着先が曲げられちゃっていて、そしてそれを本人が気づいてないのちょっとウケますね。ウケないけど!
このへんうまく言えないけどそれこそ2人が敷いた呪いなんじゃないか…というような気もする。
恨みの先が「晴明」に向かなかったら、例えば都自体に向いていたら、晴明は「都を守る」という約束を果たすことはできなかったわけだし。
まぁ実際のところ感情を取られる段階で声明は驚き焦っているので、そこが作戦通りではなかったろうな、と思うんですけど。


感情を奪われ、ただひたすら「力」のみになった晴明ってもう神さまなんじゃないだろうかとずっと思っています。
善悪(というか力を使うかどうか)の判断基準に感情が一切なくなるので、通常の人にはもう理解しえない領域になってしまう気がする。
とんでもねーもの取ってくれたよなパイ・フーシェン・・・・・・・・




▼演出について
これはもうとにかく1幕ラストが最高すぎてテンションぶち上がりますね。
タイトル回転とこちら(観客)に向けた境界を越える語りかけみたいなやつものすごくよいです。
キャストの項目で書こうと思いますが、今回ひたすら向井理がよくってヒーーーー!となりました。

場転のためにあらゆるものをぶっ壊したり吹っ飛ばしたりするのも最高、
ランちゃんの祭壇斬り意味不明すぎて大好きです笑

あとほんとどういう経緯で向井理を垂直に発射しようと思ったんだろう!?!?!?笑
初見、一瞬何が起こったかわからなくて爆笑するところでしたよ!!!!


個人的にしっくりこなかったのはOPなんだよなぁ。
偽義経に引き続きダンス系のOPですが、私の好み(あくまで私の好み)では蒼乱とかワカみたいな、流れる系のOPがいいのにな~と思っています。
なんて言ったらいいんかな、晴明が「世界に在る」のを見たかったな、みたいな。
(都をゆーっくり歩いてみて回って庵にたどり着くとか、なんかそういうの見たかった感じがする)



▼キャストについて
・中村倫也さん
初日付近は飄々とした感じでしたが、後半になるにつれてテンション高い面白い感じの晴明になっていった気がします。(それ余計つらいんだが?????????)
いのうえ歌舞伎の主人公って捨之介を筆頭に「俺がいなくても大丈夫」と思ってる人多いですけど、群を抜いてそう思ってそうなのが晴明だったな…。
ていうか捨之介は沙霧・霧丸というストッパーに出会えて、それできちんと世界に向き合うようになりますが晴明の場合それが利風だったので出会うどころか別れたところから始まっちゃうんですよね。
そりゃ…誰も止められなくない…か…?
他のキャラたちも晴明の隣を歩ける人がいるかというといないんだよなあ。
最後まで「僕達」ではなく「僕」と「みんな」なところがしんどい部分な気がします。



・向井理さん
正直なところ、風髑髏があまりピンとこなかったので、心配していました…ごめんね。
まさか「向井理に動いてもらうより向井理を動かしたらイイジャン!」になるとは世界中誰も思わないよ!!!!!
そういう飛び道具除いても、インテリボスというキャラ付けは本当に合っていていいなと思った。
やはり当て書きの妙だなあ。
良心代表みたいな利風と、インテリヤクザなパイ・フーシェンをやったのもギャップがあっていい味でした。
しかもそこにランちゃんの子守りも入って来たので、「90年代長寿アニメの敵」って感じが一層強くて好きです笑
いやーだってこれ、令和1クールアニメなら子守り要素は入らないよ!!
大阪での確変がすごかったらしく、そっちの映像残してほしかったな~~~~~~



・早乙女友貴さん
新感線はゆっくんのことをいつまで5ちゃいと思っているのか!!!(SUKI)
偽義経がクソガキすぐ死ぬだったのでもしや今回は真面目系だったりするんだろうかと思っていたところ「チューリップ組 ラン・フーリン 5ちゃい」が来たもんだから笑ってしまった。
パイとの掛け合いもすごくよくて、私の中でこのふたりはロケット団です(?)
何より本人がすごく楽しそうで、それがキャラに現れているのがとてもよかった。
しかしフーリン一族の教育はどうなってるのか。タオちゃんだけのせいではないだろうけどもっとしっかりしてほしいよ…笑



・竜星涼さん
もったいない選手権堂々の第一位。
竜星涼自体がもったいないのではなく一番物語の割を食ってしまったキャラクターだという意味で。
そもそも「夢三郎をやっていた人に兵庫をやらせる」というとんでもねーことやってるのもビビりましたが!!!
(しかし新感線はそうだよな…蘭兵衛やってた人に天魔王をやらせる劇団ですよ…)
悪兵太というキャラクター、どう考えてももっと出番があるキャラじゃん???????
もっと"中心"に関わるキャラじゃん!?
これはキャラ造作が「兵庫」であるから余計に思うのかもしれませんが…。
もちろん悪兵太がいてこそではあるんだけど、でも、なんならいなくてもなんとかなってしまう立ち位置に「なってしまった」キャラだなと思ってしまった。
「色々あってエピソード削ることになったけど、もうキャスティングしてあるのでキャラ自体を削ることはできない」みたいな感じ。
それがもーーーーーーーーもったいないの極みで辛い!!
絶対銅山に至るまでの都でのエピソードあったし、銅山~都に戻るあたりでもエピソードあったキャラだよ…。
イメージ的には銅山あたりで3クール目に入って、2話くらい悪兵太がメインの銅山でのエピソードがあり、そっからまた晴明に主軸が戻る感じだよ!!!!
そういう意味で本当に勿体なくてつらいです。



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偽義経みたいに、平成版・令和版みたいな感じでやってくんないかな~~~~~笑
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